北紀行 2012(20) エピローグ

函館山ロープウェイ山麓駅をあとにして、ふたたび海方面に向けて歩き出した。途中で見落としていた教会を眺めながら、坂道を下って行く。


前夜、赤煉瓦倉庫群にあるStarbucksが雰囲気が良いという話を聞いていたので、途中で休みを入れる。海の見える、天井の高い開放的な空間。アイスモカを飲みながら、彼氏と旅行していたときのことを思い出していた。

それから30分後、僕は函館朝市を彷徨っていた。「鰊の切り込み」をお土産に買って帰りたかったのだ。特筆したくなる美味さ。もともと家庭料理だったようで、毛ガニを買わせようとする市場にそんなものがあるのか? ウロウロしてみたり、声をかけてきた売り子に尋ねると「鰊の糀漬?ないない」とそっけない。

仕方なく撤収。
少し歩いて"鳳蘭"という店で函館塩ラーメンを食べる。
最近濃い味付けのつけ麺ばかりを食べているんで、まるで中華の"湯(たん)"スープを口にしているような錯覚に陥った。それくらい薄味。



食事を終えて、ふたたび市場へ。
一店だけ「糀漬」を売っている店があることを覚えていた。「なに探しているの?」と売り子のおばさんに声をかけられたので、鰊の糀漬を探していると言ったらひどく驚かれた。「うちでもお得意さんが来たときに裏から出してくるんだよ」と。冷蔵庫からお目当ての"鰊の切り込み(糀漬)"を出してきてくれた。

「他になにかいる?」
僕はすっかりうれしくなってしまい、冷凍焼売を2ケースを用意させ、さらに……「棒鱈ってある?」って尋ねておばさんを驚かせた。京都の料亭なんかが買ってゆく品質なんだそうだ。素人さんが棒鱈を買ってゆくのは珍しいんだとか。

目的の海産物を手に入れて、ホクホクして市場をあとにした。
ホテルに戻り、預けてあった旅行鞄を取り出し、そして函館空港行きのバスに乗ったのは13:00過ぎだった。


Mission complete!
飛行機の窓から津軽海峡を眼下に見下ろして、僕は幸せな気分に包まれていた。

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